2010年10月10日日曜日

先生

 私は村出身で、うちの村には一つしか歯医者さんが無かったんです。だから小さいころからずっとその先生だけが私の歯の全てを扱っていたんですよ。特に私はすぐ虫歯になったり、歯肉炎かなんかになったり、神経死んだりとか(ん?一緒だっけ?)、とにかく「まきこちゃんはうちの常連さんだねぇ」とか言われるくらいお世話になったんですよ。
 
先生は絶対治してくれるし、一度「治療の後もまだ痛い」ってなってしまった時も「それは申し訳ない!!責任もって云々!!!」とすごい熱意で治療してくれた。その時、実際最初よりも二回目の方がすっごい薬とか使ってお金かかったはずなのにただにしてくれた。
 治療の面だけじゃなくても、私が高校で理系に進むって言った時、「うわぁ~同じ理系なんだ嬉しいなぁ~」「理系の話をする人が近くにいないからちょっと話すけどね、云々」とか言ってすごく仲も良かった。うちの村は特に高齢化が進んでて、高齢者の方がよく診てもらいに来るからいつもすごく忙しかったんだけど、一人一人大事にしてくれた。
 
先生は、「なんか虫歯ができたんですけど」とかで診てもらおうとしても、「痛いの?治したいの?」ってまず聞いて、「まだ痛みはないけど…」とか言ったら「そんなに自然の歯をいじるのはいいことではないと僕は思うからね、僕は痛い、治したいって本人が言うまでは治療したくないんだ。学校の検査とか、親が治しなさいって言ったとしても、本人と治療する僕の問題だからね。」とかすごくポリシーみたいなんも話してくれて、すっごく嬉しかった。とにかくその先生が大好きで、高校や大学で地元を離れても、帰省するまで歯の痛みは絶対に我慢した。その先生以外に私の歯をいじらせたくなかった。
 
 でもその先生が今月の初めに亡くなってしまったらしい。とってもとってもショック。まだ50歳で、今年の夏あたりから白血病が発症した。白血病が直接の死因ではなかったらしいが。
 
 私が大学一年の冬に行った時、先生は「最近はまきこちゃんがこれをつめた時よりも詰め物がすごく丈夫なものに開発されたから、もし取れたり欠けたりしたら丈夫なのをつけてあげるからね。歯に異常がなくても、虫歯になりやすい体質だから、フッ素を塗ったり、サービスしてあげるから、また来てね。」と言ってくれた。
 私は4月あたりから、先生の言う、前つめたところが少しだけ欠けたような気がする。痛くはないけど、気になるので治してもらいたかった。夏休みに帰省をしたが、私が帰省をしたときはちょうどお盆の時期だった。ぎりぎり帰省初日だったらあいていたらしいが、急に予約を入れるのも失礼かな、まだ痛くもないから冬にまた帰ったときにお願いしよう。と思って治療に行かなかった。
 すごく、すごく悔しいなぁ。
 
 先生が今まで治療して下さった分の内容を理解できる人なんて、せめて先生からの紹介状がないと一人もいるはずがいないのに、これからどこの歯医者に行けばいいのかな。先生以外の人に診てもらうの、すごく怖いなぁ。

 とにかく、先生に胸いっぱい感謝します。ありがとうございました。今まですごく忙しい毎日だったけどしばらくゆっくりしてほしいと思います。

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